禁断の幕末維新史(封印された写真編)加治将一著
幕末・維新の俗説を纏めたものなのか、小さな史実を地道に集めた上で導いた仮説なのか、それともその両方なのかは定かではないが、興味深い本である。
第1章 坂本龍馬暗殺の真犯人は目の前の男だった!?(近代国家ニッポンを夢にみた龍馬;倒幕派の中心人物とされ、つねに命を狙われていた)
龍馬は”無血革命派”で暗殺の黒幕は、薩土密約を背景にした”武力革命派”。龍馬を暗殺したのは”武力革命派”のメンバーである中岡慎太郎で、中岡は負傷が原因で死んだのではなくけじめをつけて切腹したのではないかという説。
感想:”無血改革派”の龍馬を新撰組が狙う理由はあまりなく、薩長の”武力革命派”が黒幕である可能性は大いにある。但し、中岡は龍馬の同志であったとは言え、果たして志半ばで切腹するだろうか?
第2章 北朝から南朝へ明治天皇はすり替えられた!?(ひ弱な睦仁、天皇になったとたんに武士を相撲で投げた!?;睦仁は右利きだったが、明治天皇は左利きだった!?)
薩長を主体とした倒幕維新という政治的な動きの中で、孝明天皇は暗殺された。そして、北朝系の孝明天皇のひ弱な子で皇位を継承した睦仁親王は、南朝系の子孫とみなされる「大室寅之祐」にすり替えたのだという説。
感想:写真で見る限り全くの別人(すり替えられた)に見えるものの、当時の写真はそれぞれ誰と特定できるのだろうか。すり替えというような重要な事柄を現代に至るまで隠し通せるものであろうか。
第3章 実物とは異なる西郷隆盛の肖像が広められた真相(智将、勇敢、情のある西郷は今も大人気;西郷はウツで引きこもった!?)
薩英戦争講和修交時の写真:右端が西郷と言われている。
西郷の肖像画は死後に描かれたもの。上野の銅像は敢えて本人に似せないことで、カリスマ性を打ち消そうとした。明治維新後の西郷の言動がおかしいことからウツではないかという説。
感想:フルベッキ写真に西郷が写っているというものだが、西国の人で似た顔立ちの人がいても特に不思議ではない。別人ではないだろうか。(どちらかと言うと薩英戦争講和修交時の写真の方が西郷本人の可能性があるとに思われる)
第4章 皇女・和宮のすべては抹殺!?(筋を通す鉄の女・和宮;慶喜の命乞いを仲介し、徳川家の存続に尽くした賢女)
明治維新後に和宮の足跡が消えたことから、死去したとされる明治10年より前に抹殺された。これも明治天皇のすり替えを隠すためである。
第5章 出口王仁三郎は有栖川宮のご落胤ゆえに弾圧!?(戦前の日本に総理大臣よりも有名な男がいた;王仁三郎が描いた夢は、桁はずれのスケール)
王仁三郎は有栖川宮のご落胤故に、大木教団のカリスマ教祖として北朝派から熱心な信仰を受けた。
筋が通っている部分もあれば、そうでない部分もあるが、真相は不明である。歴史は勝者によって都合よく書き換えられる。”事実は小説より奇なり”の可能性も十分考えられる。